憲法、憲法判例、憲法学習法

平成17年度司法書士試験憲法

司法書士試験 平成17年度憲法(問題1〜3)

第一問

憲法第13条に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは幾つあるか。

ア 何人も、自己消費の目的のために酒類を製造する自由を有しているから、製造目的のいかんを問わず、酒類製造を一律に免許の対象としたうえで、免許を受けないで酒類を製造した者を処罰することは、憲法第13条の趣旨に反し、許されない。

イ 何人も、公共の福祉に反しない限り、喫煙の自由を有しているから、未決勾留により拘禁された者に対し、喫煙を禁止することは、憲法第13条の趣旨に反し、許されない。

ウ 何人も、個人の意思に反してみだりにプライバシーに属する情報の開示を公権力により強制されることはないという利益を有しているから、外国人に対し、外国人登録原票に登録した事項の確認の申請を義務付ける制度を定めることは、憲法第13条の趣旨に反し、許されない。

エ 何人も、公共の福祉に反しない限り、自己の意思に反してプライバシーに属する情報を公権力により明らかにされることはないという利益を有しているから、郵便物中の信書以外の物について行われる税関検査は、わいせつ表現物の流入阻止の目的であっても、憲法第13条の趣旨に反し、許されない。

オ 何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼうを撮影されない自由を有しているから、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼうを撮影することは、憲法第13条の趣旨に反し、許されない。

1 1個  2 2個  3 3個  4 4個  5 5個


解説

この問題は皆さんいかがでしたか?

正直言って、まともに解こうとしたら、司法書士試験で出すような問題じゃないですよね。こんな判例、司法試験受験生だって知らないぜ、ってのが混ざってます。

でも、大丈夫。もちろん、おもいっきり重要な判例は知っていたほうがいいんです。でも、それ以上に大切なのは、バランス感覚。こんなケースの、こんな状況だったら、こんなバランスかな、っていうのが大切。

憲法上の人権と、その対立する利益のバランスですからね、
1)その憲法上の利益の重要性
2)対立する利益の重要性
を考えることです。

じゃあ、アからね。

アは、実は有名な判例ですけどね。お酒、っていうのがポイント。これがお米じゃあこうはいきませんよ。お酒、だからね。お酒は、嗜好品でしょ。なきゃこまるってもんじゃないわけ。困る人もいるけど。私も、ちょっと困るけどさ。

一方で、じゃあ、なんのために免許制にしてるんだっていうとね、実は、お酒ってのは、大切な税収源なんですよ。酒税って聞いたことあるでしょ?ビールだと税金高いから、発泡酒を作った。そしたら、そっちも税金が高くなったから、第3のビールだ。メーカー頑張ったよね。そしたら、そっちも課税あげちゃえって?ふざけんなよ、おまえら。とか、怒ったことのある人、いるでしょ?

片方は、嗜好品を製造する自由、もう片方は、税金の適正な徴収、とくれば、裁判所が嗜好品の勝ちにするわけないよね。

というわけで、アは正しくないです。

次、イ。これも、煙草なんだよね。煙草は嗜好品だからね。価値としては弱いわけ。喫煙の自由、って、おいおい、そんなの憲法が認めてるっていえるの?って話でしょ。

で、一方は、未決拘禁者の管理という問題。

確かに、未決拘禁ですから、有罪と確定してないからね、煙草くらいすわせてあげたら、って思うけどね。私の知り合いに、禁煙が嫌で絶対に公共交通機関には乗りたくない、というわがままなおじさんがいますけど、愛煙家にとっては、煙草をすえないっていうのは本当につらいみたいですよ。

ついでだから、禁煙すれば、とか言ったら怒られそうでしょ。

ただね、煙草をすわせてあげるとなると、設備が大変でしょうね。やったらめったら吸われたら、回りも迷惑だし、喫煙室つくるわけ?そこで、好きに行ってたむろってるの?判例は、火事でもおきたらどうすんのさ、って言ってますけど、そういう心配もできるわけ。

だから、できるならすわせてあげたら、くらいのことは言えたとしても、喫煙の禁止は許されない、なんて強気のことを裁判所が言うわけないでしょ。

ウです。

これはね、外国人の管理なんですよ。外国人の管理については、裁判所は、かなりのところ立法や行政の裁量を認めてます。しかも、ここでは、思想・信条にわたる事項を聞こうってわけじゃないわけね。居住関係や身分関係なわけだ。これは、裁判所も認めますよ。

ちなみに、この判例は、かなりマイナーです。百選にも出てない。平成9年度の重判には出てたかな。あるいは判例六法くらいには出てます。こんなのまで覚えなくちゃいけない、なんて思わないこと。

有名なマクリーン事件で、裁判所がはっきり言いましたよ。外国人には日本に入国したり、滞在し続けたりする権利はないんだって。外国人の滞在に関する制度は、政治部門の裁量なんですよ。だから、よっぽどのことがない限り、こういう制度について、裁判所がダメだしをすることはないわけ。

というわけで、ウも間違い。ここまで、正しいのは一個もないね。

じゃあ、次は、エ。

これはわいせつ表現物の流入阻止でしょ。そして、信書以外の税関検査です。これがダメってことはないでしょ。

さっきのウもそうでしたけど、マイナー判例の場合は、常識でなんとかなりますよ。利益衡量ってほどのことはないわけ。実際、やってるしね、裁判所がダメって言ってたら、税関検査はしてないわけでしょ。

オです。これはどうかな。正当な理由もないのに、っていうところがポイントですね。道を歩いてたら、警官に写真を取られたら、なんだろうって思いますよね。しかも、あっちでもとられ、こっちでもとられ、「俺、犯罪者扱いか?」って思うでしょ。

実は、これは京都府学連事件という、とっても有名な判例です。このくらいは知っておいたらいいんだけど、知らなくても、ここでは、正当な目的がないのに、って言ってるのが大きなヒントですよ。

さっきの利益衡量で考えると、
1)制約される権利の性質
2)対立する利益(制約による利益)
のうち、2)の対立する利益がゼロなんですから。だって、正当な目的がないって言ってるでしょ。だから、これは許されないってことになるわけ。

これ、わかりますよね。たとえば、警察官は、特定の要件のもとで、犯罪者を逮捕できるわけだけど、これがもし、正当な理由無しで人を逮捕できる、って言ったら、どうなりますか?あのやろ、顔が気にいらねえから逮捕してやる、とか、イケメンで気に食わないから逮捕、とかね。天才バカボンのおまわりさんじゃないんだからさ。「たいほする~っ」ってね。

そんなわけで、オは正解。

結局、正しいのはオだけでした。


第二問

条約が憲法に適合するか否かを最高裁判所又は下級裁判所が審査することができるかという問題について、肯定説と否定説の二つの見解がある。これらの見解に関する次の1から5までの記述のうち、正しいものはどれか。

1 内閣の条約締結権が憲法によって認められた権能であることは、肯定説の根拠とはならない。

2 憲法第98条第2項が、日本国が締結した条約を誠実に遵守すべき旨を定めていることは、否定説の根拠とはならない。

3 内閣が締結し国会が承認して成立した条約については、強い合憲性の推定が働くと考えるべきであるとの考え方は、肯定説と矛盾する。

4 憲法第81条が、裁判所の違憲審査の対象として条約をあげていないことを重視すると、否定説を導きやすい。

5 条約が国家間の合意という特質を持ち、しかも極めて政治的な内容を含むという点を重視すると、肯定説を導きやすい。


解説

はい、これは裁判所が条約についての違憲審査権を持っているかっていう問題ですね。こういうのを、よく学説問題とかいうみたいですけど、こんなの、そんなレベルじゃないから脅かされちゃダメですよ。そりゃあ、中には、学説を知らなくちゃわからない選択肢もあるかもしれないけど、ほとんどの肢は、単なる論理問題です。読解力があれば大丈夫。そして、論理問題を間違えなければ最終的な答えは、ほとんど導き出せます。

さっそく、やってみましょう。

1 内閣の条約締結権が憲法によって認められた権能であることは、肯定説の根拠とはならない。

これを読んでぴんと来る人は、それなりに勉強してきた人でしょうね。あまり憲法に力を入れてこなかった人は迷わずスルー。というか、ん?って悩んだ時点で、スルーしましょう。考えたらわかるかもしれないけど、本番では考える時間もったいないです。さっさと簡単な肢を見つけること。

2 憲法第98条第2項が、日本国が締結した条約を誠実に遵守すべき旨を定めていることは、否定説の根拠とはならない。

否定説の根拠にはならない、んですって。裁判所の違憲審査の対象とならないとは言えない、ってことね。でもね、「条約を誠実に遵守すべきだって憲法が言ってるじゃん」って言ってみたらどうですか?反論できるできないは別として、否定説の根拠になってますよね。

だから、これは間違いです。

3 内閣が締結し国会が承認して成立した条約については、強い合憲性の推定が働くと考えるべきであるとの考え方は、肯定説と矛盾する。

「強い合憲性の推定が働いたからなんだっちゅうねん。推定は推定やないか、合憲って決まったわけやあらへんやろが、なんで違憲審査ができないことになるんじゃ、○○(←自主規制)」

これは、簡単に間違いとわかりますね。

4 憲法第81条が、裁判所の違憲審査の対象として条約をあげていないことを重視すると、否定説を導きやすい。

そりゃそうだ。
「違憲審査の対象に、条約は入っていないんだから、条約は違憲審査できないってことでしょ」って言えるわけね。

はい正解。ほら、簡単に見つかったでしょ。

ついでに、5も見とこうか。

5 条約が国家間の合意という特質を持ち、しかも極めて政治的な内容を含むという点を重視すると、肯定説を導きやすい。

いやいや、これまたわかりやすい。

国家同士の約束でしょ、国の内部事情で、やっぱりやめた、って言えないでしょ、しかも政治的な話だからね、裁判所があれこれ口出しできないような話が多いんだっていうわけ。

当然、否定説にいきますよ、これは。
だから間違いね。

最後に、スルーしておいた1をもう一度。

1 内閣の条約締結権が憲法によって認められた権能であることは、肯定説の根拠とはならない。

これはね、条約を締結するのは憲法によって認められた権能なんだから、憲法に違反しちゃいけないのは当たり前でしょ、っていうわけだ。憲法が与えた権能を使って、憲法よりも上位の規範を作れるわけないでしょ、っていうわけね。

だから、これは肯定説の根拠だよね。だから、これも間違い。

この問題の背景には、憲法と条約とどちらが優位にあるかって問題があります。

もし条約が優位ならば、条約は違憲審査の対象外です。

憲法が優位とすれば、条約は違憲審査の対象になるわけですが、憲法優位説の中にも、81条列挙に条約が入っていないことや、条約は国同士の合意であり、きわめて政治的な内容を含むことから、実質的には条約は審査の対象にならないという説もあるわけです。。

もっとも、国内で法規範の効力を持つ場合、違憲審査の対象になるのは当然、というのが通説ですけれどもね。


第三問

内閣が国会に法律案を提出することが憲法上許されるかという問題については、これを肯定する立場と否定する立場とがある。次のアからオまでの記述のうち、否定する立場の根拠となるものの組合せとして最も適切なものは、後記1から5までのどれか。

ア 憲法上、内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出することができる。

イ 憲法上、国会は、その立法過程において、他の国家機関の関与なしに、国会の議決のみで立法を行うことができるという「国会単独立法の原則」が認められている。

ウ 憲法上、国会は、法律案を自由に修正し否決することができる。

エ 憲法上、予算案の提出や憲法改正の発議については、明文で内閣や国会にその権能が与えられている。

オ 憲法上、内閣総理大臣及び過半数の国務大臣は、国会議員の中から選ばれることになる。

1 アイ  2 アオ  3 イエ  4 ウエ  5 ウオ


解説

この問題は、組合せ問題です。組合せ問題は、やり方によって、非常に楽して正解を導き出せますので、ありがたいですね。

それでは、さっそく初学者モードで解いてみましょう。
なお、確認しておきますが、否定する立場の根拠の組合せを探すんでしたね。

それでは、アから。

ア 憲法上、内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出することができる。

この議案に法律案が入るか入らないか、意見はいろいろですが、少なくとも、議案を提出できることが、法律案を提出できない根拠にはなりませんね。

ですから、アは否定説の根拠にはなりません。

ここで、アは答えに入りませんので、選択肢のうち1のアイ、と、2のアオを切れますね。

残りは、  3 イエ  4 ウエ  5 ウオ

ここで、選択肢をみると、イは一つにしか入っていませんね。でもウとエは二つに入ってる。だから、ウ、エと見て行くのが効率的ですね。

で、ウをみましょう。

ウ 憲法上、国会は、法律案を自由に修正し否決することができる。

国会は、自由に修正もできるし、否決もできるっていうんです。だったら、法律案なんて誰がだそうが、ダメなものはダメ、変えたいところは変える、全然問題ないでしょ。

これは、内閣が法律案を提出できない根拠にはなりませんね。

よって、ウもだめ。ということは、
4のウエ、と5のウオが切れて、残るは、3のイエ。

というわけで、答えは3。おしまい。

二つの肢を見れば終わってしまう問題でした。ラッキー。

では、一応、他の肢も検討していきます。

イ 憲法上、国会は、その立法過程において、他の国家機関の関与なしに、国会の議決のみで立法を行うことができるという「国会単独立法の原則」が認められている。

国会単独立法の原則ですからね。最初から最後まで、国会だけでやるんだよ、って考えれば、内閣なんかに法律案ださせられないってなるわけ。

はい、これは否定説の根拠ですね。

エ 憲法上、予算案の提出や憲法改正の発議については、明文で内閣や国会にその権能が与えられている。

予算案の提出については明文で内閣に権能が与えられています。憲法改正の発議については、明文で国会ってなってるんです。こんなふうに、明文で規定されているのが筋でね、そうすると、法律案の提出については、内閣に権能があるって明文では言ってないわけですよ。

だから、否定説の根拠なわけですね。

オ 憲法上、内閣総理大臣及び過半数の国務大臣は、国会議員の中から選ばれることになる。

これは、内閣に法律案を提出する権能を認めないよ、って言ったところで、ほとんど国会議員なんだから、意味ないじゃん、ってことね。

否定しても意味ないよ、って言ってるわけですから、否定説の根拠にはなりません。

平成17年の問題については、1問目だけがちょっとやっかいでしたね。でも、これは判例をどれだけ覚えたかっていう問題じゃないですね。判例の筋をつかんでなければ解けません。逆に言えば、細かい勉強はしなくても、バランスとか、判断の筋をつかまえていれば、解ける問題なわけです。

あとの二つは、これは楽勝でしょう。落ち着いて論理的に考える、これに尽きます。

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