憲法、憲法判例、憲法学習法

平成22年度司法書士試験憲法

平成22年度司法書士試験憲法

第1問

次の文章は、法の下の平等に関する文章である。(   )の中に後記の語句群の中から適切な語句を選択して文章を完成させた場合、( A )から( E )までに入る語句の組合せとして最も適切なものは、後記1から5までのうちどれか。

憲法第14条は平等原則を規定しているが、「平等」の意味には、幾つかの考え方がある。これらのうち、(   )とは、現実の様々な差異を捨象して原則的に一律平等に取り扱うこと、すなわち、基本的に( A )を意味するが、これに対し、(   )とは、現実の差異に着目してその格差是正を行うこと、すなわち、(  )を意味する。また、「平等」の意味を、相対的平等、すなわち、等しいものは等しく取り扱い、等しくないものは等しくなく取り扱うべきであるという意味に理解すると、その帰結は、( B )ということになる。

また、憲法第14条第1項が規定する「法の下の平等」については、法を執行し適用する行政権と司法権による差別を禁止するという(   )を意味するという考え方と、法そのものも平等の原則に従って定立されるべきであるという( C )をも意味するという考え方がある。前者の考え方に立てば、法の下の平等の原則に、立法者は( D )という考え方につながりやすいこととなる。憲法第81条が裁判所に違憲審査権を認め、現実に裁判所が法令違憲の判決を下すことができるのは、( E )になじむものである。

[語句群]
ア 法内容の平等 イ 法適用の平等 ウ 形式的平等 エ 実質的平等
オ 機会均等 力 配分ないし結果の均等 キ 拘束される ク 拘束されない
ケ 差別的取扱いは絶対的に禁止される 
コ 不合理な差別的取扱いだけが禁止され、合理的区別は認められる 
サ 前者の考え方 シ 後者の考え方

  1 A力  Bコ  Cイ
  2 A力  Bケ  Dク
  3 Aオ  Cア  Eサ
  4 Bコ  Dク  Eシ
  5 Cア  Dキ  Eシ

これも国語問題として解けそうですが、基本知識がないと時間内に処理するのは厳しいかもしれません。基本知識さえあれば、ごく簡単な問題ですが、差別についての考え方がまとまっていて勉強になるかもしれません。

(1)形式的平等か実質的平等か

憲法第14条は平等原則を規定しているが、「平等」の意味には、幾つかの考え方がある。これらのうち、(   )とは、現実の様々な差異を捨象して原則的に一律平等に取り扱うこと、すなわち、基本的に( A )を意味するが、これに対し、(   )とは、現実の差異に着目してその格差是正を行うこと、すなわち、(  )を意味する。

まず、平等の考え方に対立する二つがあるとします。
① 現実の様々な違いを無視して、原則一律平等に扱う考え方
② 現実の差異に着目して格差是正を行う

この対比に着目して、選択肢を見ると、「ウ 形式的平等」と「エ 実質的平等」という選択肢があり、その説明として、「オ 機会均等」と「力 配分ないし結果の均等」があります。

まず①の考え方は、現実の様々な違いを無視するので、「ウ 形式的平等」であり、それはつまり、一律に平等に取り扱う限り、結果において差がでることは差別と考えない「オ 機会均等」です。これに対して、②は、「エ 実質的平等」であり、現実の差異に着目して格差是正を行う「力 配分ないし結果の均等」です。

よって、Aはオですね。

(2)絶対的平等か相対的平等か

また、「平等」の意味を、相対的平等、すなわち、等しいものは等しく取り扱い、等しくないものは等しくなく取り扱うべきであるという意味に理解すると、その帰結は、( B )ということになる。

等しくないものも、等しく取り扱うというのは、絶対的な平等となります。そうではなく、等しいものは等しく、等しくないものは等しくなく取り扱うのですから、そこに区別が生じます。いわゆる相対的平等ということになります。この考えに近い選択肢を選ぶと、「コ 不合理な差別的取扱いだけが禁止され、合理的区別は認められる」がありますね。一方、それに対立する絶対的な平等の考え方は、「ケ 差別的取扱いは絶対的に禁止される」です。

つまり、Bはコです。

(3)「法の下の平等」は立法者を拘束するか

また、憲法第14条第1項が規定する「法の下の平等」については、法を執行し適用する行政権と司法権による差別を禁止するという(   )を意味するという考え方と、法そのものも平等の原則に従って定立されるべきであるという( C )をも意味するという考え方がある。

文中の対立する二つの考え方は、
③法の執行・適用において差別を禁止
④法の定立において平等を重視

この対立関係を見ながら選択肢を見ると、「ア 法内容の平等」と「イ 法適用の平等」があります。どんな法でも平等に適用すればよいと考えるのか、そもそも法の内容そのものが平等でなければならないと考えるのか、です。

当然、④は法の定立において平等を重視するのですから、「ア 法内容の平等」ですし、①は、どんな法であっても適用が平等であればよいのですから「イ 法適用の平等」です。

(極端に言えば、「年収2000万円以下の人には選挙権がない」などの法律でも、適用を平等に、つまり、年収2000万円を超えている人には選挙権を与え、そうではない人には選挙権を与えなくても、一律平等に適用したことになるわけです。)

よって、法の定立までも平等でなければならないというCはアですね。

前者の考え方に立てば、法の下の平等の原則に、立法者は( D )という考え方につながりやすいこととなる。

前者の考え方というのは、③法の執行・適用において差別を禁止、という考え方であり、「イ 法適用の平等」です。この考え方は、法の適用場面が問題であって、法の定立、つまり立法場面は平等原則は関係ない、ということになります。立法者は関係ない、という考え方ですから、法の下の平等の原則に立法者は「ク 拘束されない」となるわけです。

ですから、Dはクです。

憲法第81条が裁判所に違憲審査権を認め、現実に裁判所が法令違憲の判決を下すことができるのは、( E )になじむものである。

法令違憲、つまり、立法者が定立した法の内容までも審査し、違憲という判断を行うことができるのは、④の法の定立において平等を重視という考え方です。これは、問題文の文脈では、「シ 後者の考え方」です。

よって、Eはシです。

以上から、 4の「Bコ  Dク  Eシ」が正解となります。

(4)穴埋め

最初に述べたように、本問は、問題としてはとても簡単ですが、わかりやすく差別の考え方について説明してくれているので、穴埋めをした形で、再度提示します。よく読んでおくとまとめになるかもしれません。

 憲法第14条は平等原則を規定しているが、「平等」の意味には、幾つかの考え方がある。これらのうち、(ウ 形式的平等)とは、現実の様々な差異を捨象して原則的に一律平等に取り扱うこと、すなわち、基本的に(Aオ 機会均等)を意味するが、これに対し、(エ 実質的平等)とは、現実の差異に着目してその格差是正を行うこと、すなわち、(力 配分ないし結果の均等)を意味する。また、「平等」の意味を、相対的平等、すなわち、等しいものは等しく取り扱い、等しくないものは等しくなく取り扱うべきであるという意味に理解すると、その帰結は、(Bコ 不合理な差別的取扱いだけが禁止され、合理的区別は認められる)ということになる。
 また、憲法第14条第1項が規定する「法の下の平等」については、法を執行し適用する行政権と司法権による差別を禁止するという(イ 法適用の平等)を意味するという考え方と、法そのものも平等の原則に従って定立されるべきであるという(Cア 法内容の平等)をも意味するという考え方がある。前者の考え方に立てば、法の下の平等の原則に、立法者は(Dク 拘束されない)という考え方につながりやすいこととなる。憲法第81条が裁判所に違憲審査権を認め、現実に裁判所が法令違憲の判決を下すことができるのは、(Eシ 後者の考え方)になじむものである。

第2問

政教分離の原則に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、幾つあるか。

ア 憲法が政教分離の原則を規定しているのは、基本的人権の一つである信教の自由を強化ないし拡大して直接保障することを明らかにしたものである。

イ 政教分離規定の保障の対象となる国家と宗教との分離には、一定の限界があり、国が宗教団体に対して補助金を支出することが憲法上許されることがある。

ウ 憲法第20条において国及びその機関がすることを禁じられている「宗教的活動」とは、宗教の布教、強化、宣伝等を目的とする積極的行為に限られず、単なる宗教上の行為、祝典、儀式又は行事を含む一切の宗教的行為を指す。

エ 憲法第89条において公の財産の支出や利用提供が禁止されている「宗教上の組織若しくは団体」とは、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを目的とする組織や団体には限られず、宗教と何らかのかかわり合いのある行為を行っているすべての組織や団体を指す。

オ ある特定の宗教法人に対して国が解散命令を発することは、国が当該宗教法人と密接にかかわることになるから、政教分離の原則に違反し、許されない。

1 1個  2 2個  3 3個  4 4個  5 5個   

(参考)
憲法
  第20条(略)
  2 (略)
  3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
  第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

政教分離原則について判例の趣旨に沿ったものを選ぶ問題です。この問題は比較的難しいと思います。また、これは個数問題ですのでミスは許されません。正直言って、司法書士試験でこの問題はきついかな、と思います。問題文を丁寧に読んでいけば、決して正解が不可能とは思いませんが、時間的にも切羽詰っている中でどこまでそれができるか、ですね。基本テキストくらいは理解していないと、本問での正解は厳しいのではないでしょうか。

ア 憲法が政教分離の原則を規定しているのは、基本的人権の一つである信教の自由を強化ないし拡大して直接保障することを明らかにしたものである。

素直に読めば、政教分離の原則が信教の自由を「直接」保障するものではないと読むのが自然だと思います。最高裁も、津地鎮祭訴訟で、「国家と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするもの」としています。

もっとも、こうした最高裁の考え方に対し、芦部教授は、信教の自由と政教分離は不可分のものであるのに、この二つを峻別することで政教分離を緩やかにしてしまっていると批判します。しかし、芦部教授も、政教分離が「直接」信教の自由を保障するとはもちろん考えていません。(「政教分離規定そのものが人権保障規定であることを意味しない」憲法学Ⅲ、有斐閣)

イ 政教分離規定の保障の対象となる国家と宗教との分離には、一定の限界があり、国が宗教団体に対して補助金を支出することが憲法上許されることがある。

これが正しいことは常識的に認められるのではないでしょうか。たとえば、宗教団体が所有する神社仏閣などで、文化財に相当するものなどには補助金が支給されています。(宗教活動に対しての補助金ではなく、あくまでも文化財保護のためです。)このように、国家と宗教の分離といっても一定の限界があるし、逆に、だからこそ、その線引きで様々な争いが生じているわけです。

これについても、津地鎮祭訴訟は、政教分離原則を完全に貫くとかえって不合理な事態が生じ、「例えば、特定宗教と関係のある私立学校に対し一般の私立学校と同様な助成をしたり、文化財である神社、寺院の建築物や仏像等の維持保存のため国が宗教団体に補助金を支出したりすることも疑問とされ」その結果、「宗教との関係があることによる不利益な取扱い、すなわち宗教による差別が生ずる」と指摘し、国家と宗教の分離には一定の限界があるとしています。

ウ 憲法第20条において国及びその機関がすることを禁じられている「宗教的活動」とは、宗教の布教、強化、宣伝等を目的とする積極的行為に限られず、単なる宗教上の行為、祝典、儀式又は行事を含む一切の宗教的行為を指す。

これは微妙に難しいかもしれません。ただ、先のイの選択肢でも見たように、国家と宗教の完全分離というのはなかなか難しいと考えられています。ですから、「一切の」宗教的行為までを禁止するとは考えられていません。たとえば、官公庁で正月用のしめ飾りをすることなどは認められていますし、児童館でクリスマスツリーを飾ることも認められています。(余談ですが、私の知り合いは、幼い頃、お寺で催されたクリスマスパーティに参加していたそうです。)

ちなみに、津地鎮祭訴訟(最大判昭和52・7・13)は、目的効果基準という基準で、憲法上禁止されている宗教的行為かどうかを判断しています。なお、ここで定立された基準そのものはかなり緩やかなもので、かなり批判の余地があるとは思います。

エ 憲法第89条において公の財産の支出や利用提供が禁止されている「宗教上の組織若しくは団体」とは、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを目的とする組織や団体には限られず、宗教と何らかのかかわり合いのある行為を行っているすべての組織や団体を指す。

この選択肢は、たとえば宗教法人が経営する幼稚園に対する援助だとかを考えていただければよいのではないでしょうか。あるいはキリスト教系の大学や仏教系の大学への補助金ですね。判例は、これら宗教と何らかのかかわり合いのある行為を行っているすべての組織や団体に対して、一律に公の財産の支出や利用提供を禁止するというの考え方はとっていないわけです。ですから、エも誤りですね。

箕面忠魂碑訴訟(最判平成5・2・16)において、最高裁は、憲法89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」とは、「特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを目的とする組織ないし団体を指す」と判示しました。

オ ある特定の宗教法人に対して国が解散命令を発することは、国が当該宗教法人と密接にかかわることになるから、政教分離の原則に違反し、許されない。

実際に、オウム真理教に対して解散命令が出されたことはご存知の方も多いのではないでしょうか。もちろん、政教分離から言えば、特定の宗教に対する圧迫、干渉は許されませんが、ある宗教団体が組織的に犯罪行為を行った場合に、その宗教法人を解散させることが認められるのは直感的には明白ですね。

ここはこの程度の感覚で、誤りと判断しておいて良いのではないでしょうか。

もう少し詳しく説明すると、宗教法人というのは、宗教団体が財産の所有・維持・管理のため、法人格を得たものです。つまり、宗教団体の世俗的な活動を担当する側面が宗教法人であって、宗教活動をするための団体ではありません。(宗教活動はあくまでも宗教団体として行います。)このような、法律によって法人格を与えられた世俗的活動を担当する組織、すなわち、国による干渉が前提となる法律上の組織に対して、国が法律によって統制を行うこと一般が政教分離の原則違反になることは考えられません。

余談ですが、オウム真理教解散命令事件(最決平成8・1・30)においては、この解散命令が信者の信教の自由を侵すのではないかとして争われました(政教分離違反を争ったわけではないことに注意してください)。最高裁は、「解散命令によって宗教団体であるオウム真理教やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしても、その支障は、解散命令に伴う間接的で事実上のもの」として、「必要でやむをえない法的規制」としました。

以上、正しいものはイだけでした。

第3問

次の対話は、地方自治に関する教授と学生との対話である。後記の語句群の中から適切な語句を選択して対話を完成させた場合、( ① )から( ⑤ )までに入る語句の組合せとして最も適切なものは、後記1から5までのうちどれか。

教授: 憲法には、地方自治の基本原則について、どのような定めがありますか。

学生: 憲法第92条は、地方自治の基本原則について、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定しています。ここにいう「地方自治の本旨」には、一般に、( ① )が含まれると解されています。

教授: 憲法による地方自治の保障の性質について、どのように考えますか。

学生: 私は、地方自治の保障は、地方公共団体の自然権的固有権的基本権を保障したものではなく、( ② )を保障したものと考えます。

教授: 憲法上の地方公共団体の意義については、どのように考えますか。

学生: 私は、憲法上の地方公共団体であるといえるためには、( ③ )と考えます。判例も同様の立場を採っています。

教授: 現行の地方自治法では、普通地方公共団体として都道府県と市町村が規定されていますね。このような重層的な地方公共団体の在り方が憲法上の要請か否かについては、どのように考えますか。

学生: 私は、( ④ )を尊重する立場から、地方公共団体の重層的な構造は、憲法上の要請であると考えます。

教授: では、憲法第94条は、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と規定していますが、この条例制定権の根拠については、どのように考えますか。

学生: 私は、条例は、( ⑤ )であると考えます。判例も同様の立場を採っています。

[語句群]
ア 地域の住民の選挙により選出された地方公共団体の長と地方公共団体の議事機関である議会とが相互に抑制均衡するという権力分立の原則
イ 国から独立した団体が自己の事務を自己の機関により自己の責任において処理するという団体自治の原則
ウ 地方自治という歴史的・伝統的・理念的な公法上の制度
エ 地方公共団体が国民の基本的人権と同じ意味において本来的に有する包括的な自治権
オ 住民の共同体意識という社会的基盤が存在し、沿革上及び行政上の実態として地方自治の基本的権能を付与された地域団体であることを必要とする
カ 住民に直接行政を執行する団体であって、その長が公選されていることをもって足りる
キ 地方自治が憲法によって保障されるに至った歴史的背景
ク 時代の進展に沿った国の立法政策
ケ 地方自治法の条項の授権に基づく委任立法の一種
コ 地方自治の本旨に基づき、直接憲法第94条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法
 1 ①ア  ②エ  ③オ  ④ク
 2 ①ア  ③力  ④ク  ⑤コ
 3 ①イ  ②ウ  ③オ  ⑤コ
 4 ①イ  ②ウ  ④キ  ⑤ケ
 5 ②エ  ③力  ④キ  ⑤ケ   

この問題も、国語で十分正解が出せるやさしい問題です。憲法の基礎知識がないとわかりにくいのは③だけで、①②④⑤は、国語力で判断できます。そして、①⑤が分かれば答えは出るようになっています。

(1)地方自治の基本原則についての憲法上の規定

学生: 憲法第92条は、地方自治の基本原則について、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定しています。ここにいう「地方自治の本旨」には、一般に、( ① )が含まれると解されています。

①に入るのは、アかイです。

ア 地域の住民の選挙により選出された地方公共団体の長と地方公共団体の議事機関である議会とが相互に抑制均衡するという権力分立の原則
イ 国から独立した団体が自己の事務を自己の機関により自己の責任において処理するという団体自治の原則

本旨というのは、本来の趣旨とか、本来の目的、といった意味ですね。地方自治の本来の目的というのは何かです。ですが、アは地方自治の目的というよりは、地方自治における制度上の原則ですね。となると、イしかありません。

この時点で選択肢のうち、
1  ①ア  ②エ  ③オ  ④ク
2  ①ア  ③力  ④ク  ⑤コ
は、答えではありえなくなります。

解説

なお、一般に地方自治の本旨としては、住民自治と団体自治が挙げられます。

ⅰ)住民自治

その地域の課題など、国が一律に決定するよりも、地域の住民が自ら決定したほうがよいことはたくさんあります。国の外交政策だとか、経済政策などのテーマではなく、もっと住民に身近なことは、地域の住民自らの意思に基づいて自治を行うべきだと考えられます。これが住民自治という要素であり、「地域の住民自らの意思に基づいて地方自治が行われる」という民主主義的要素です。

なお、地方自治は民主主義の学校などといわれるのは、このような身近なことがらについて討議民主主義の経験をつむことで、より高次元の民主主義的な決定に対する訓練になる、と考えられるからです。

憲法93条が地方公共団体の長および議会の議員の直接選挙を規定していることや、95条による地方自治特別法の住民投票などは、住民自治の憲法上の現れです。

ⅱ)団体自治

これはいわゆる中央集権に対する地方分権そのものです。明治憲法下では、府県知事は中央政府が任命し、法律や勅令で地方に関することがらがすべて決められていました。それに対して、国の必要以上の干渉を防ぐ権力分立的な発想が団体自治の要素です。これは、「国から独立した団体の、自らの意思と責任の下に地方自治がなされる」という自由主義的・地方分権的要素です。

憲法94条は、地方公共団体の財産の管理と事務処理、行政の執行に関する権能を認め、法律の範囲内での条例の制定権を認めることで、団体自治も保障しています。

(2)地方自治の憲法による保障の性質

学生: 私は、地方自治の保障は、地方公共団体の自然権的固有権的基本権を保障したものではなく、( ② )を保障したものと考えます。

②に入りうるのは、ウかエです。

ウ 地方自治という歴史的・伝統的・理念的な公法上の制度
エ 地方公共団体が国民の基本的人権と同じ意味において本来的に有する包括的な自治権

自然的固有権的基本権というのは、妙に長い名前ですが、名前から素直に考えれば、地方団体には固有の自然権的な基本権があるから、それを憲法が保障している、という考え方ですね。これはエの考え方ですね。これに対立する考えですから、ウを選べばよいわけです。

これで、
5  ②エ  ③力  ④キ  ⑤ケ
も、間違いになります。

残りは、
3 ①イ  ②ウ  ③オ  ⑤コ
4 ①イ  ②ウ  ④キ  ⑤ケ
ですので、最短で答えを出すためには、⑤を確認すればよいことになります。
ですが、ここでは、順番通り③、④の順に検討していきます。

解説

憲法による地方自治の保障の性質については、いくつか議論があります。

ⅰ)固有権説

これは、基本的人権と同じように、地方公共団体にも前国家的な基本権があるという説です。この説によると、憲法の地方自治の保障は、自然権的・固有権的な基本権の保障ということになります。

通常、この説の内容だけ聞くと、人権と同じように考えるのはあまりにおかしいと反応する人もいますが、歴史的には国家ができる前に、地方政府があったと考えるのは自然ではあります。ここから、地方政府にも固有の統治権を認めるというのが固有権説です。

しかし、近代以降の国家においては主権は国家にのみ属する、という考え方からすると、この固有権説は、主権の単一不可分性に反すると批判されます。

ⅱ)伝来説(承認説)

これは固有権説とは正反対で、地方自治権というのは、国の承認・許容・委任によって国の統治権から伝来するという説です。この説によると、地方自治というのは法律で、どのようにも決定できることになります。こうなると、憲法が地方自治を保障している意味はほとんどなくなってしまいます。

ⅲ)制度的保障説

そこで、通説は、以上の二つの説をいずれも極端として、制度的保障説を採用します。これは、歴史的・伝統的に形成された地方自治の制度の核心部分は、国の立法によっても侵害されることがないと考える説です。そして、そこで核心部分というのは、先に述べた「地方自治の本旨」であると理解されています。

(3)憲法上の地方公共団体の意義

学生: 私は、憲法上の地方公共団体であるといえるためには、( ③ )と考えます。判例も同様の立場を採っています。

③に入るのは、オかカです。

オ 住民の共同体意識という社会的基盤が存在し、沿革上及び行政上の実態として地方自治の基本的権能を付与された地域団体であることを必要とする
カ 住民に直接行政を執行する団体であって、その長が公選されていることをもって足りる

この部分に関してだけは、判例の考え方を知らないと、少し難しいかもしれません。しかし、実は、正解を導く上で、③がわかる必要はないのです。逆に、これがわかっても、それだけでは正解は確定できません。ですから、ここは飛ばしてもよい、ということになります。

ただし、カの選択肢は、それ自体がかなりおかしなことを言っていることに気がつけば、③に入るのがオであることもわかると思います。つまり、カの選択肢によれば、憲法の下位規範である法律で長の公選を否定すれば、それで憲法上の地方公共団体でなくなってしまうわけです。オの見解も、実は、一部、論理的な矛盾はありますが、カほどではありません。

解説

かつて東京都の特別区における区長の公選制が廃止されたとき、地方公共団体の長の公選を規定する憲法93条2項違反でないか争われた際に、最高裁は、東京都の特別区は憲法上の地方公共団体ではない、としました。(最大判昭和38・3・27)

このとき、最高裁は、
「単に法律で地方公共団体として取り扱われていることだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもっているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等自治の基本的権能を付与されている地域団体であることを必要とする」と述べました。

この最高裁の考え方には批判も強く、
①共同体意識というのは漠然としすぎている
地方自治法によって規定された実態をもって憲法上の存在であるかどうかを決めるのは論理的におかしい。(これが、先ほどオにも一部論理的な矛盾があると述べたところです。)

また、上記以外にも、一審の東京地裁(東京地判昭和37・2・26)は以下のように述べていて参考になります。

憲法が地方自治を規定した趣旨は、地方自治を確立し、既存の地方公共団体について一層完全な自治体とすることです。特別区も憲法の発足時より存在した団体ですから、たとえ、これが重要機能を全面的には持たない特殊団体だとしても、完全なる自治体へと発展させることが憲法の趣旨にあっています。なのに、その長の公選制を廃して、さらに一層不完全なる自治体とすることは、憲法の趣旨に反していることが明らかです。

(4)地方公共団体の二段階制は憲法上の要請か

学生: 私は、( ④ )を尊重する立場から、地方公共団体の重層的な構造は、憲法上の要請であると考えます。

④に入るのはキかクです。

キ 地方自治が憲法によって保障されるに至った歴史的背景
ク 時代の進展に沿った国の立法政策

重層的な構造が憲法上の要請と考えると、立法政策によっては変更できなくなります。ですから、学生はキを尊重する立場、つまりキが入ることになります。

ただ、残念ながら、この④キが確定できても、③オも正しい以上、3か4かの確定はできません。結局、⑤で最終的な確定をすることになります。

解説

地方自治の二段階制を憲法が保障しているかについては、3つの説があります。

ⅰ)否定説:立法政策説

憲法は、二段階制については特に規定していないので、「地方自治の本旨」に基づいていれば、法律によって一段階制を採用することも可能と考える説です。

ⅱ)肯定説①:都道府県・市町村制保障説

これは、明治憲法下で不完全な自治体であった都道府県を、地方行政の民主化のために現行憲法が完全な自治体に変更したという歴史的背景を重視する立場です。これによれば道州制への採用は憲法違反になります。

ⅲ)肯定説②:二段階制保障説

地方自治の本旨である住民自治・団体自治を考えれば、より身近である基礎的な団体である市町村を廃止することは住民自治に反し、一方、より規模の大きい広域団体は、地方分権を実現する上では不可欠であり、これを廃止することは、団体自治の要請に反すると考えられます。ですから、憲法は二段階制そのものは保障していると考えますが、都道府県を廃止し、道州制を採用することは可能と考える説です。

(5)条例制定権の根拠

学生: 私は、条例は、( ⑤ )であると考えます。判例も同様の立場を採っています。

⑤に入るのは、ケかコです。

ケ 地方自治法の条項の授権に基づく委任立法の一種
コ 地方自治の本旨に基づき、直接憲法第94条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法

憲法上の条例制定権の根拠が法律による授権というのはおかしいですね。ですからケはありえません。ここはコしかないわけです。これは判例を知る必要はありませんね。そして、選択肢としては、
4 ①イ  ②ウ  ④キ  ⑤ケ
は、間違いとなり、最終的に、
3 ①イ  ②ウ  ③オ  ⑤コ
が、正解として確定されます。

なお、(2)の②で切った選択肢
5  ②エ  ③力  ④キ  ⑤ケ
も、実は、この⑤の選択肢で間違いとわかりますので、①と⑤さえ答えが出せれば、正解の
3 ①イ  ②ウ  ③オ  ⑤コ
が、確定できます。

以上、問題としては非常に簡単に解ける問題でした。

解説

この論点はかなりマイナーな論点ですから、そこまで詳しく知る必要はありませんが、一応かんたんに解説しておきます。

条例制定権の根拠については4つの学説があります。

ⅰ)92条説

条例制定権は、92条が保障した地方自治権に含まれているとする説。

ⅱ)94条説

憲法41条は国会を「国の唯一の立法機関」と規定しているので、憲法が明文で例外を認めた94条が条例制定権の根拠となると考える説。

ⅲ)92条・94条並列説

92条の「地方自治の本旨」が国の立法権を制約したうえで、94条が具体的に41条の例外を規定しているとする説。

ⅳ)委任立法説

(2)の憲法による地方自治の保障の性質について伝来説を採用していることを前提とし、地方自治権というのは、国の承認・許容・委任によって国の統治権から伝来するものであるのだから、条例制定権も当然、法律による委任に由来すると考えるべきだとします。

なお、判例は、大阪市売春防止条例事件(最大判昭和37・5・30)において、
「地方公共団体の制定する条例は、憲法が特に民主主義政治組織の欠くべからざる構成として保障する地方自治の本旨に基づき、直接憲法94条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法に外ならない」と判示し、94説または、92条・94条並列説に立っています。

powered by QHM 6.0.4 haik
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional