憲法、憲法判例、憲法学習法

憲法判例解説

憲法判例解説

このページでは憲法のごく基本的な判例について、簡単に解説していきます。
より本格的な解説はブログ憲法判例解説をご覧ください。
お遊びですが、超訳憲法判例はこちらです

人権総論

外国人の人権

マクリーン事件(最大判昭和53・10・4)

アメリカ人マクリーン氏が日本在留更新の申請をしましたが、ベトナム反戦デモなどの政治活動をしていたことを理由に、申請を許可されませんでした。マクリーン氏は不許可の取消を求めて争いました。
(判旨)
①基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象としているものを除き、我が国に在留する外国人にも等しく及ぶ。
②外国人の政治活動の自由も保障される。
③外国人には、日本に在留する権利はなく、法務大臣の裁量に委ねられている。

東京都管理職選考事件(最大判平成17・1・26)

東京都職員であった韓国籍の特別永住者である保健師が、管理職選考試験の受験を日本国籍ではないという理由で拒否されたことを争った事件です。
(判旨)
①公権力の行使に当たる行為を行い、もしくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、またはこれらに参画することを職務とする公権力行使等地方公務員は、国民主権の原理に基づき、原則として日本の国籍を有するものが就任することが想定されている。
②普通地方公共団体が、公権力行使等地方公務員と、これに就任するために経験するべき職との一体的な管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管理職に就任することができるとすることは違憲ではない。

外国人地方参政権(最判平成7・2・28)

日本で生まれ育った在日韓国人が、定住外国人の地方公共団体の選挙権を争いました。
(判旨)
①憲法93条2項にいう「住民」とは、地方公共団体内の区域内にすむ日本国民を意味し、日本在留の外国人には地方公共団体の長や議員等の選挙の権利は保障されていない。
②在留外国人のうちでも永住者等であって、居住する区域の地方公共団体と密接な関連を有する者に、法律をもって地方選挙権を付与する措置を講ずることは憲法上禁止されてはいない。
③しかし、この措置は立法政策の問題である。

その他の外国人の人権判例

  • 森川キャサリーン事件(最判平成4・11・16):日本在留の外国人の一時的海外旅行に伴う再入国は憲法上の権利ではない。
  • 諮問押捺拒否事件(最判平成7・12・15):国家機関による正当な理由のない指紋押捺強制からの自由の保障は外国人にも及ぶが、外国人登録法が定める指紋押捺制度は、目的に合理性と必要性があり手段にも相当性があるので、憲法14条に違反しない。

法人の人権

八幡製鉄政治献金事件(最大判昭和45・6・24)

八幡製鉄が、自民党に政治献金をしたことが、会社の定款外行為であるとして、株主が損害賠償を求め、株主代表訴訟を起こしました。
(判旨)
①憲法第三章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能なかぎり、法人にも適用される。
②会社は、自然人たる国民と同様に、政治的行為をなす自由を有し、政治資金の寄付も行うことができる。

私人間効力

三菱樹脂事件(最大判昭和48・12・12)

3ヶ月の試用期間後、三菱樹脂株式会社から、入社試験時に学生運動歴を隠していたことを理由に本採用を拒否された原告は、「採用の拒否は、思想・信条による差別である。」として、労使関係の存在を主張しました。
(判旨)
憲法19条、14条は、その他の自由権的基本権の保障規定と同様、もっぱら国・公共団体の統治行動と個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。
②私的支配関係においては、個人の自由や平等に対する具体的な侵害のおそれがあるときは、立法措置や、私的自治に対する一般的制限規定である民法第1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって調整を図ることができる。
③企業には、契約締結の自由があり、思想・信条を理由に雇い入れを拒むこともできるし、採否決定の際に、思想・信条を調査することもできる。
(※ この判決は、一般的には、間接適用説を採用した判決と理解されています。)

昭和女子大事件(最判昭和49・7・19)

署名運動の事前許可や学外団体への許可ない加入禁止を規定した「生活要録」に違反し、大学からの団体からの離脱を求められた学生が、自宅謹慎中にメディアで大学を批判し、大学を退学処分となった学生が、「生活要録」の憲法違反と学生の身分確認を争った事件です。
(判旨)
①憲法は私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものではなく、私立大学の学則の細則である「生活要録」の規定について、直接、憲法の基本権保障規定に違反するかどうかを論ずる余地はない。
②大学は設置目的を達成するために必要な事項を学則等により一方的に制定し、学生を規律する包括的権能を持つ。特に、私立大学においては、独自の伝統ないし校風と今日言う教育方針を学則等によって具体化し実践することが認められ、学生もその規律に服することを義務付けられる。
③退学処分は、実社会の政治的社会的活動にあたる行為を理由としたものであり、学生の学問の自由および教育を受ける権利を侵害し、公序良俗に違反するものではなく、思想・信条を理由とした差別でもない。
④懲戒処分の相当性や処分の選択の判断は学校当局の合理的な裁量に委ねられ、退学処分には特に慎重な配慮を要するが、事前に補導を行うことが学校の法的義務であるとはいえない。
⑤以上から、大学のとった措置は、教育的見地から批判の対象になるかどうかはともかく、社会通念上の合理性を欠くものとはいえず、裁量の範囲内である。

女子若年定年制事件(最判昭和56・3・24)

定年について、男子55歳、女子50歳(その後、男子60歳、女子55歳)と定めた日産自動車の就業規則にもとづき、50歳をもって退職を命じられた女子社員が、雇用関係継続を争いました。
(判旨)
①女子従業員各個人の能力等の評価を離れて、女子従業員全体を会社に対する貢献度の上がらない従業員とみるべき根拠はなく、女子従業員一律に従業員として不適格とみて企業外へ排除するまでの理由はない。
②以上、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められない。
③就業規則中、女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したもので民法90条の規定により無効である。

百里基地訴訟(最判平成元・6・20)

国が自衛隊基地建設のために土地を購入したことが憲法9条違反ではないかと争われた事件です。
(判旨)
①憲法98条1項にいう「国務に関するその他の行為」とは、公権力を行使して法規範を定立する国の行為を意味し、国が私人と対等の立場で行う行為は「国務に関するその他の行為」にあたらない。
②国が私人と対等の立場で行う私法上の契約は、特段の事情がない限り、憲法9条の直接適用を受けず、私人間の利害関係の公平な調整を目的とする私法の適用を受けるに過ぎない。
憲法9条はすぐれて公法的なものであり、私法的な価値秩序においてそのまま民法90条の「公の秩序」の内容を形成するものではなく、私法上の規範によって相対化され、「公の秩序」の一部を形成する。
④国の私法上の行為の効力の有無は、私法的な価値秩序において、社会的に許容されない反社会的な行為であるという認識が、社会の一般的観念として確立しているか否かが基準となる。

特殊な法律関係(特別権力関係)

よど号ハイジャック新聞記事抹消事件(最大判昭和58・6・22)

起訴拘留中の被疑者が、私費で読売新聞を定期購読していたところ、拘置所長が、当時発生した「よど号ハイジャック事件」に関する記事を、塗りつぶして抹消しました。この処分の違法性が争われました。
(判旨)
①新聞紙、図書等の閲読の自由についても、逃亡及び罪証隠滅の防止という勾留の目的のほか、監獄内の規律及び秩序の維持のために必要とされる場合にも、一定の制限を加えられることはやむをえない。
②制限が許されるためには、具体的事情のもとにおいて、その閲読を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当程度の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、その場合においても、右制限の程度は、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべき。
③監獄法はこのように解釈できるので合憲。
④拘置所長の判断も、上の規準に照らし合憲であった。

猿払事件(最大判昭和49・11・6)

北海道猿払村の郵便局に勤務する郵政事務官で、地区労組協議会事務局長も勤めていたものが、昭和42年の衆議院議員選挙の際、協議会の決定に従って、勤務時間外に日本社会党公認候補の選挙用ポスターを公営掲示場に貼り、また、掲示を依頼して配布したところ、国家公務員の政治活動を禁止する国家公務員法および人事院規則に違反するとして起訴されました。なお、国家公務員法は禁止する政治的行為の具体的内容を人事院規則に委任していました。
(判旨)
①公務員は厳に中立の立場を堅持して職務の遂行に当たらねばならず、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは合理的で必要やむをえない限度にとどまる限り憲法の許容するところである。
②行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するためという目的は正当であり、これを害するおそれがある政治的行為を一律禁止することは禁止目的との間に合理的な関連性がある。
③公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行動を、その内包する意見表明の制約を狙いとしてではなく、行動のもたらす弊害の防止を狙いとして禁止する場合は、意見表明の制約は行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的制約に過ぎず、その他の行為によって違憲を表明する自由をも制約するものではない。一方、禁止によって得られる利益は国民全体の共同利益であって、得られる利益は失われる利益に比してさらに重要であり、利益の均衡を失するものではない。
国家公務員法が禁止される政治的行為の内容を(白紙的に)人事院規則に委任したことは、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行動類型に属する政治的行為を具体的に定めることを委任したものであることは合理的解釈によって理解できるので、憲法の許容する委任の限度を越えてはいない。

幸福追求権

京都府学連事件(最大判昭和44・12・24)

大学管理制度改悪反対のデモ行進が、外形上、京都市公安条例に違反した形になりました。このデモを監視していた警察官が、現場を写真撮影したところ、学生が、これに抗議して警察官に暴行を加え、公務執行妨害等で起訴されました。被告側は本人の承諾なく、令状もない写真撮影は違憲と主張しました。
(判旨)
①何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌、姿態を撮影されない自由を有する。警察官が正当な理由も無いのに、個人の容貌を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されない
②現に犯罪が行われ、または、行われて間もない場合、証拠保全の必要性及び緊急性があり、撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法で行われる場合は、憲法13条、35条に違反しない。

前科照会事件(最判昭和56・4・14)

解雇をめぐる事件において、会社側弁護士の弁護士会を通した照会を受けて、京都市中京区長が前科を回答、その結果、会社側が労働委員会や地裁構内において関係者や傍聴人の前で前科を摘示、経歴詐称を理由として予備的解雇しました。中京区長が弁護士会の照会に回答したことはプライバシーの侵害にあたるとして争われた事件です。(なお、この判例では、プライバシーを権利とした伊藤補足意見が重要です。)
(判旨)
①前科及び犯罪経歴は、人の名誉、信用に直接にかかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する。
②弁護士会からの照会に応じて前科等の有無を報告することが場合によって許されないわけではないが、その取り扱いには格別の慎重さが要求される。
③照会申出書の理由に「中央労働委員会、京都地方裁判所に提出するため」とあったの過ぎないのに、漫然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず、前回のすべてを報告することは、公権力の違法な行使にあたる。

  • 伊藤補足意見
    ①他人に知られたくない個人の情報は、それがたとえ真実に合致するものであっても、その者のプライバシーとして法律上の保護を受ける。
    ②これは私人による公開であっても、国や地方公共団体による公開であっても変わるところはない。
    ③公開が許されるためには、裁判のために公開される場合であっても、その公開が公正な裁判の実現のために必須のものであり、他に代わるべき立証手段がないときなどのように、プライバシーに優越する利益が存在するのではければならず、その場合でも必要最小限の範囲に限って公開しうるにとどまる。
    ④人の前科等の情報を保管する機関には、その秘密の保持につきとくに厳格な注意義務が課せられている。

江沢民講演事件(最判平成15・9・12)

早稲田大学が当時の中華人民共和国国家主席であった江沢民氏の来日に際し、同氏の後援会を主催しました。その際、警視庁から警備のために参加者名簿の提出を求められ、学生の同意を得ないまま名簿を提出したことに対し、プライバシーの侵害が争われました。
(判旨)
①(ⅰ)学籍番号、使命、住所及び電話番号は、単純な情報であって、秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものではない。
(ⅱ)しかし、このような個人情報についても、本人が、自己が欲しない他社にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきものである。
(ⅲ)よって、本件個人情報はプライバシーにかかわる情報として法的保護の対象となる。
②(ⅰ)プライバシーにかかわる情報は、取り扱い方によっては、個人の人格的な権利利益を損なうおそれがあるものであるから、慎重に取り扱う必要がある。
(ⅱ)大学は学生らの意思に基づかずみだりにこれを他社に開示することは許されない。
(ⅲ)一方、開示について承諾を求めることは容易であった。
(ⅳ)以上から、大学の行為は、任意に提供したプライバシーにかかわる情報の適切な管理についての合理的な期待を裏切るものであり、プライバシーを侵害するものとして不法行為を構成する。

住基ネット訴訟(最判平成20・3・6)

住民基本台帳改正によって構築された「住基ネット」は、氏名・生年月日・性別・住所のⅳ情報に住民票コード及び転入・出生の変更情報を加えた本人確認情報を市町村、都道府県、国の機関等で共有し確認できるネットワークシステムです。この「住基ネット」がプライバシー権その他の人格権を侵害したとして争われた事件です。
(判旨)
憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有する。
②(ⅰ)住基ネットによって管理、利用等される本人確認情報のうち、氏名、生年月日、性別及び住所から成る4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報である。
(ⅱ)変更情報も、転入、転出等の異動事由、異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるもので、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。
(ⅲ)住民票コードは、住基ネットによる本人確認情報の管理・利用等を目的とし
て、都道府県知事が無作為に指定した数列の中から市町村長が一を選んで各人に割
り当てたものであるからその秘匿性の程度は本人確認情報と異なるものではない。
③住基ネットによる本人確認情報の管理・利用等は、法令等の根拠に基づき、住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。
④住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり、そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない。
⑤行政機関が住基ネットにより住民である被上告人らの本人確認情報を管理、利用等する行為は、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するものということはできず、当該個人がこれに同意していないとしても、憲法13条により保障された上記の自由を侵害するものではない。

エホバの証人輸血拒否事件(最判平成12・2・29)

エホバの証人の信者が、輸血拒否の意思を示していたにもかかわらず、医師が無断で輸血を行ったため、損害賠償請求を提起しました。
(判旨)
①輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を拒否する明確な意思がある場合、このような意思決定をする権利は人格権の一内容として尊重されなければならない。
②患者の意思を知っていたにもかかわらず、手術の際に、輸血以外に救命手段がない場合、輸血をするという方針を医師が説明しなかったことは、患者の意思決定の権利を奪うものであり、人格権の侵害にあたる。

法の下の平等

尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭和48・4・4)

実父から性的虐待を受けていたが、成人となり結婚話が持ち上がった際にも、実父に反対され、さらに虐待を受けたので、実父を絞殺した被告が、刑法の旧200条尊属殺人罪で起訴されました。
(判旨)
①刑法200条の立法目的は、自然的な情愛であり社会の基本的な道義である存続に対する尊重と報恩を保護するもので合理的な根拠がある。
②法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限っている点において、その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、普通殺に関する刑法199条の法定刑と比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、憲法14条1項に違反して違憲。

国籍法違憲判決(最大判平成20・6・4)

法律上の婚姻関係にない日本国民である父とフィリピン人母との間に日本で生まれた子どもが、出生後に父親から認知を受けました。しかし、当時の国籍法3条1項によれば、届出によって日本国籍を取得するためには「父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子」という準正要件があり、生後認知のみでは国籍取得の要件を満たしていないとされていました。この国籍法の規定が違憲であるとして争われた事件です。
(判旨)
憲法10条は、国籍取得の要件をどのように定めるかについて立法府の裁量判断に委ねているが、日本国籍の取得に関する法律の要件によって生じた区別が、立法府の裁量権を考慮しても、立法目的に合理的な根拠が認められない場合、またはその具体的な区別と立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、合理的な理由のない差別として憲法14条1項に違反する。
②国籍法3条1項の立法目的自体は合理的な根拠があり、規定が設けられた当時の社会通念や社会的状況の下では、準正要件には立法目的と一定の合理的関連性があった。
③しかし、我が国における社会的、経済的環境の変化に伴い、家族生活や親子関係に関する意識や実態は変化し多様化し、我が国との結び付きの強弱を両親が法律上の婚姻をしているか否かをもって直ちに測ることはできない。
④また、諸外国においては、非嫡出子に対する法的な差別的取り扱いを解消する方向にあり、自国民である父の非嫡出子において準正を国籍取得の要件としていた多くの国において、今日までに、認知等により自国民との父子関係の成立が認められた場合にはそれだけで自国籍の取得を認める旨の法改正が行われている。
⑤以上のような国内的、国際的な社会的環境等の変化に照らし、準正を出生後における届けにおける日本国籍取得の要件としておくことについて、立法目的との間に合理的関連性を見出すことがもはや難しい。
⑥国籍法が、同じく日本国民との間に法律上の親子関係を生じた子であるにもかかわらず、日本人父が生後認知した非嫡出子についてのみ、父母の婚姻という子にはどうすることもできない父母の身分行為が行われない限り、生来的にも届出によっても日本国籍の取得を認めないとしている点は、我が国との密接な結び付きを有する者に限り日本国籍を付与するという立法目的との合理的関連性の認められる範囲を著しく超える手段を採用しているものというほかなく、その結果、不合理な差別を生じさせているものといわざるを得ない。
⑦国籍法3条1項の規定が本件区別を生じさせていることは、憲法14条1項に違反するものであった。
⑧日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し、父から出生後に認知された子は、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したという部分を除いた国籍法3条1項の要件が満たされるときは、同項に基づいて日本国籍を取得することが認められる。

嫡出性の有無による法定相続分差別(最大決平成25・9・4)

非嫡出子と嫡出子との間に法定相続分に差があることが、法の下の平等に反するとして争われた事件。
(決定要旨)
法定相続分の差を「法律婚主義の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったもの」として合憲と判断した過去の最高裁決定(最大決平成7・7・5)を変更しました。
①家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきた
②父母の婚姻関係という、自ら選択または修正する余地のない理由で子どもに不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立してきた。
③以上を理由として、遅くとも本事件の相続が開始した平成13年7月には、嫡出子と非嫡出子の法定相続分における差別は憲法14条1項に違反していた。

女性の再婚禁止期間(最判平成7・12・5)

前夫と調停離婚が成立し、その3ヶ月後に、事実上の婚姻関係にある別の男性との婚姻届を提出したが、民法733条の定める再婚禁止期間を経過していないとして届出が受理されなかったため、女性のみの6ヶ月の再婚期間禁止を定める民法733条は、男尊女卑の儒教的道徳観に基づき、女性の再婚を嫌忌する父権的思想に依拠するものであり、憲法14条1項の法の下の平等に反し、それを制定また廃止しなかったことが国賠法上の違法行為にあたるとして争いました。
(判旨)
①国会ないし国会議員の立法行為(立法の不作為を含む)は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにも関わらず国会があえて当該立法を行うというように、容易に想定しがたいような例外的な場合でない限り、国会賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものでない。(最判昭和60・11・21を引用)
②合理的な根拠に基づいて各人の法的取扱いに区別を設けることは憲法14条1項に違反するものではなく、民法733 条の元来の立法趣旨が父性推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解される以上、国会が民法733条を改廃しないことが直ちに前示の例外的な場合に当たると解する余地のないことが明らかである。
③同条についての国会議員の立法行為は国会賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。



精神的自由

思想・良心の自由

謝罪広告強制事件(最大判昭和31・7・4)

衆議院議員に立候補したものが、対立候補について虚偽の事実を公表しました。これを名誉毀損として、名誉回復の措置として謝罪広告の掲載等を求められましたが、選挙の際の演説を名誉毀損とすることは憲法21条の表現の自由の保障に反すると主張するとともに、「陳謝」「謝罪」のような本人の意図しない言説を新聞紙上に掲載させるのは憲法19条の認める良心の自由を侵害するとした争った事件です。
(判旨)
①他人の行為に関して無根の事実を公表し、その名誉を毀損することは言論の自由の乱用であって、たとえ、衆議院議員選挙の際、候補者が政見発表等の機会において、かつて公職にあった者を批判するためになしたものであったとしても、これを以て憲法の保障する言論の自由の範囲内に属すると認めることはできない。
②単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のものにあっては、代替執行をなし得る。
③事実が虚偽かつ不当であったことを発表する謝罪国国を新聞紙に掲載を命ずることは、屈辱的もしく苦役的労苦を科し、倫理的な意思、良心の自由を侵害することを要求するものとは解せられない。

麹町中学校内申書事件(最大判昭和63・7・15)

中学校在籍中に、学生運動を行い、内申書に「校内で麹町中全共闘を名乗り、機関紙を発行し、また文化祭粉砕を叫んでビラをまいた。大学生ML派の集会にも参加」したことを記載された原告は、高校入試で不合格になったことを、この内申書の記載が理由であるとして、内申書の記載を憲法19条違反として訴えました。
(判旨)
①内申書は、思想、信条そのものを記載したものではない。
②記載された外部的行為によって、思想・信条を了知できるわけでもない。③さらに、思想・信条を入学者選抜の資料に提供したものとは解することができない。

南九州税理士会政治献金事件(最判平成8・3・19)

南九州税理士会では、定期総会で、業界に有利な税理士法改正を働きかける運動資金として特別会費を徴収、政治団体に寄付を行う決議をしましたが、この決議について、税理士会の目的外の行為であり、無効であるとして争われた事件です。
(判旨)
①税理士会は法人として、法及び会則所定の方式による多数決原理により決定された団体の意思に基づいて活動し、その構成員である会員は、これに従い協力する義務を負い、その一つとして会則に従って税理士会の経済的基礎を成す会費を納入する義務を負う。
②しかし、法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有するものが存在していることが当然に予定されている。したがって、税理士会が決定した意志に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。
③特に、政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、占拠における投票の自由と裏表を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等について自主的に決定すべき事柄である。
④公的な性格を有する税理士会が、このような事柄を多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務付けることはできない。
⑤税理士会が政党など規正法上の世辞団体に対して金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。

信教の自由

加持祈祷事件(最判昭和38・5・15)

突然、異常な言動を示すようになった18歳の女性に対し、僧侶が、狸が憑いているとして、燃え盛る護摩壇のそばで女性を押さえつけ殴るなどして、この女性を死亡させました。僧侶は傷害致死罪で起訴されましたが、彼は自分の行為が信教の自由で保障されるものであることを主張しました。
(判旨)
①信教の自由の保障も絶対無制限のものではなく、公共の福祉によって制限される。
②被告人の行為は著しく反社会的なものであり、信教の自由の限界を逸脱したものというほかはない。

神戸高専剣道受講拒否事件(最判平成8・3・8)

信仰する宗教の絶対平和主義の教義に基づき、必修の体育の剣道実技を拒否した生徒が、2回連続で原級留置・そして退学処分を受けました。
(判旨)
①剣道実技拒否の理由が、信仰上の核心部分と密接に関連する真摯なもの。
②学校側は、代替措置を取ることも可能であったし、そのような措置が政教分離原則に反するとも言えない。
③履修拒否の主な理由や、全体的な成績について検討せず、「学力劣等で成業の見込みがない」として退学処分にした学校側の措置は、社会観念上著しく妥当を欠く処分であり、裁量権の範囲を越える違法なもの。

津地鎮祭事件(最大判昭和52・7・13)

津市が、市体育館の建設にあたり、神式の地鎮祭を行い、公金を支出しました。これが政教分離に反するとして問題になりました。
(判旨)
①国家と宗教の完全な分離は不可能で、かえって不合理な事態を生じる。②政教分離原則は、目的と効果の点から相当とされる限度を超える場合に、その行為を許さないとするもの。
③行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉などになるものだけが、禁止された「宗教的活動」。
④この判断は、外形的形式にはとらわれず、社会通念に従って、客観的にされるべきである。
⑤地鎮祭の目的は、工事の無事安全を願う社会の一般的慣習に従った儀礼を行うという世俗的のものであり、効果も、神道を援助、助長するものではなく、他の宗教を圧迫、干渉するものでもなく、宗教的行事とはいえない。

愛媛玉串料訴訟(最大判平成9・4・2)

靖国神社が行った例大祭などへの玉串料や献灯料、さらに県の護国神社に対する供物料を、愛媛県が公金から支出したとして、憲法20条3項および89条違反として争われました。
(判旨)
①祭祀は、神社神道における中心的な宗教上の活動で、いずれも神道の祭式にのっとって行われる儀式であり、各神社が宗教的意義を有すると考えていることが明らか。一般人も、この奉納を社会的儀礼の一つにすぎないと評価しているとは考えられない。
②地方公共団体が特定の宗教団体に対してのみ本件のような形で特別のかかわり合いを持つことは、一般人に対して、県が当該特定の宗教団体を特別に支援しており、それらの宗教団体が他の宗教団体とは異なる特別のものであるとの印象を与え、特定の宗教への関心を呼び起こすものといわざるを得ない。
③目的が宗教的意義を持ち、効果が、特定の宗教に対する援助、助長、促進になるので、県と靖国神社の係わり合いは、相当とされる限度を越え、憲法20条3項の禁止する宗教的活動にあたり、89条の禁止する公金支出にもあたる。

箕面忠魂碑訴訟(最判平成5・2・16)

A)市の遺族会が維持管理していた忠魂碑が、小学校の増改築工事によって移転の必要が生じました。市が、移転用地を取得して移設し、敷地を遺族会に無償貸与しました。
B)同時に、遺族会が忠魂碑の前で行った神式または仏式で行った慰霊祭に、公務員である教育長が参列、市の職員や公費を使って準備に当たらせたことも問題になりました。
(判旨)
A)①忠魂碑は戦没者の慰霊・顕彰のためで戦没者記念碑としての性格のもので、少なくとも戦後は、神道とのかかわりは稀薄。
②行為の目的は、小学校の校舎の立替のために、戦没者記念碑的な性格の施設を他の場所に移設し、その敷地を学校用地として利用することを主眼とした世俗的なもの。
③特定の宗教を援助、助長、促進したり、他の宗教を圧迫、干渉を加えるものとは認められない。
④忠魂碑の移転に関わる市の行為は、憲法20条3項によって禁止された宗教的活動とはいえない。
B)①遺族会は戦没者遺族の相互扶助・福祉向上と英霊の顕彰を目的としており、憲法でいう宗教団体ではない。
②教育長の参列は、目的は戦没者遺族に対する社会的儀礼を尽くすという世俗的なものであり、効果も、特定の団体に対する援助、助長、促進、または、圧迫、干渉になるとは認められず、憲法上の政教分離原則に反するものとはいえない。

空知太神社事件(最大判平成22・1・20)

北海道砂川市 (いわゆる砂川事件は東京都立川市の砂川町で別の地名) が、その市有地を神社の敷地として無償で使用させていることは、 政教分離原則に違反する行為であり、市が使用貸借契約を解除せず、神社建物等の撤去を請求しないことは、違法に財産の管理を怠るものであるとして争われた事件です。
(判旨)
①憲法89条の趣旨は、国家が宗教的に中立であることを要求するいわゆる政教分離の原則を、公の財産の利用提供等の財政的な側面において徹底させるところにあり、これによって、憲法20条 1 項後段の規定する宗教団体に対する特権の付与の禁止を財政的側面からも確保し、信教の自由の保障を一層確実なものにしようとしたものである。
②しかし、国家と宗教とのかかわり合いには種々の形態があり、憲法89条も、公の財産の利用提供等における宗教とのかかわり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものと認められる場合に、これを許さないとするものと解される。
③国公有地が無償で宗教的施設の敷地としての用に供されている状態が、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えて89条に違反するかは、宗教的施設の性格、土地が無償で当該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯、当該無償提供の態様、これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべき。
④本件神社物件は、神社神道のための施設であり、その行事も、このような施設の性格に沿って宗教的行事として行われている。本件神社物件を管理し、祭事を行っているのは、本件氏子集団であって、宗教的行事等を行うことを主たる目的としている宗教団体であって、憲法89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」にあたる。
⑤本件利用提供行為は、市が、何らかの対価を得ることなく本件各土地上に宗教的施設を設置させ、本件氏子集団においてこれを利用して宗教的活動を行うことを容易にさせているものといわざるを得ず、一般人の目から見て、市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し、これを援助していると評価されてもやむを得ないものである。
⑥以上のような事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すると、本件利用提供行為は、市と本件神社ないし神道とのかかわり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとして、憲法89条の禁止する項の財産の利用提供に当たり、ひいては憲法20条1項後段の禁止する宗教団体に対する特権の付与にも該当する。
⑦この違憲状態の解消には、神社施設を撤去し土地を明け渡す以外にも適切な手段がありうる。直ちに本件神社物件を撤去されるべきものとすることは、地域住民らによって守り伝えられてきた宗教的活動を著しく困難なものにし、氏子集団の構成員の信教の自由に重大な不利益を及ぼすものとなる。
⑧原審は、本件利用行為の違憲性を解消するための他の合理的で現実的な手段が存在するか否かについて適切に審理判断するか、当事者に対して釈明権を行使する必要があったというべきである。
⑨本件利用提供行為を違憲とした原審の判断は是認できるが、本件神社物件の撤去請求をすることを怠る事実を違法とした判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

学問の自由

東大ポポロ事件(最大判昭和38・5・22)

東大のポポロ劇団が学内で演劇公演を行った際、私服警察官が潜入していたのが学生が発見し、これを拘束した際、警察官のポケットから紐を引きちぎるなどの暴行を加えたとして、起訴されました。学生らが奪った警察手帳から、この警察官らが、連日のように大学構内で、張り込み・尾行・盗聴を行っていたことが明らかになり、大学の自治に関わる重大な裁判となりました。
(判旨)
①大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められる。
②これは、直接には、教授その他の研究者の研究、発表、教授の自由と、それを保障するための自治を意味し、これらの自由と自治の効果として、学生も学問の自由と施設の利用を認められるもの。
③学生の集会が、実社会の政治的社会的活動にあたる行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しない。
④本件の集会は、実社会の政治的社会的活動であり、警察官が、この集会に立ち寄ったとしても、大学の学問の自由と自治を犯すものではない。

表現の自由

別ページにまとめました。


経済的自由

職業選択の自由

小売市場事件(最大判昭和47・11・22)

小売市場の開設については、その許可条件として、距離制限、つまり、すでにある他の市場から、一定の距離があることを定めた法令の合憲性が争われました。
(判旨)
①社会経済の分野における個人の経済活動に対する法的規制措置については、裁判所は立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることが明白な場合に限って、これを違憲とすることができる。
②小売市場の許可制は、中小企業保護政策の一方策としてとった措置ということができ、著しく不合理であることが明白であるとは認められず、したがって、憲法22条1項に反しない。

薬事法違憲判決(最大判昭和50・4・30)

薬事法(旧)と条例は、薬局営業の許可条件の一つとして、距離制限を定めていました。これによって、薬局営業の不許可処分を受けた業者が、処分取消を求めました。
(判旨)
①薬事法の設置制限は主に国民の生命及び健康に対する危険の防止という消極的、警察的目的のための規制措置である。
②薬事法の設置距離制限は目的のために必要かつ合理的な規制を定めたものということができないから、憲法22条1項に違反し違憲である。

財産権

森林法違憲判決(最大判昭和62・4・22)

森林を共有していた兄弟が、経営上の対立から、分割を求めました。当時の森林法は、この分割に対する制限を規定していましたので、その合憲性が争われました。
(判旨)
①森林法は森林の細分化を防止することによって森林経営の安定を図り、ひいては森林の保続培養と森林の生産力の増進を図りもって国民経済の発展に資するもの。
②一律に現物分割を認めないとすることは、同条の立法目的を達成する規制手段として合理性に欠け、必要な限度を超える。

河川付近地制限令事件(最大判昭和43・11・27)

ある業者が砂利を採取していた場所が、知事によって河川付近地として指定され、河川付近地制限令によって、砂利の採取は許可が必要となりました。
しかし、その業者は、無許可で営業を続け、起訴されました。業者は、砂利の採取を制限することに対し、補償を規定していない河川付近地制限令は、憲法29条3項違反だとして争いました。
(判旨)
①この種の財産権制限は、原則的には誰もが受忍しなくてはならない制限で、特別の犠牲を強いるものではない。
②すでに相当の資本を投入し営んできた事業ができなくなる場合、特別の犠牲をみる余地がないわけではない。
③河川付近地制限令に損失補償に関する規定がないからといって、直接憲法第29条3項を根拠にして、補償請求する余地が全くないわけではないから、河川付近地制限令の規定を違憲無効と解すべきではない。

奈良県ため池条例事件(最大判昭和38・6・26)

ため池を総有し、その堤とうを代々耕作地として使っていた農民たちが、ため池の保全に関する条例によって、その利用を禁止されたにもかかわらず、引き続き、農作物を植えていたところ、起訴されました。
(判旨)
①ため池の損壊、決壊の原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法・民法の保障する財産権の行使の埒外にある。
②よって、これを条例を持って禁止、処罰しても憲法及び法律に抵触又はこれを逸脱するものとはいえないし、憲法29条3項の損害補償は必要としない。



社会権

生存権

朝日訴訟(最大判昭和42・5・24)

生活扶助規準によって定められた金額が、生活保護法の規定する健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りない違法のものとして争われました。
(判旨)
本人死亡により訴訟終了。
念のため、
①憲法25条1項は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを、国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を付与したものではない。
②何が健康で文化的な最低限度の生活であるかは、厚生大臣の裁量。
③しかし、厚生大臣の判断が、憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界を超えた場合、または、裁量権を濫用した場合には違法な行為として、司法審査の対象となる。

堀木訴訟(最大判昭和57・7・7)

全盲の視力障害者が、障害福祉年金に加えて児童扶養手当を請求したところ、児童扶養手当法に、二重の給付を禁止する規定があり、申請を却下されました。そこで、この規定について憲法25条違反が争われました。
(判旨)
①憲法25条でいう「健康で文化的な最低限度の生活」をどのように立法化するかの判断には、高度な専門技術的な判断と、政策的判断が必要であり、立法府の広い裁量に委ねられる。
②それが著しく合理性を欠き、明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえない場合を除き、裁判所の審査に適さない。

教育を受ける権利

旭川学テ事件(最大判昭和51・5・21)

昭和36年から39年に行われた学力調査が、教師・親の教育の自由を侵害し、憲法23条、26条に反するかが争われました。
(判旨)
①憲法26条は、子どもが、学習要求を充足するための教育を大人一般に要求する権利を持っていることを規定しており、子どもの教育は、子どもの学習をする権利に対応し、その充足を図りうる者の責務である。
憲法23条の学問の自由には、教授の自由が含まれ、(大学だけでなく)普通教育においても、一定の範囲の教授の自由が認められる。
③親は、学校外における教育や、学校選択において、子女の教育の自由が認められる。
④国は、必要かつ相当な範囲で、教育内容についても決定する権限を持つ。
⑤中学校教育の機会均等を図るための行政調査として「学力テスト」を実施することは、文部省の権限に属する。

勤労権と労働基本権

政令201号事件判決(最大判昭和28・4・8)

昭和23年に政令201号が制定され、労働運動の主力であった官公労から争議権を剥奪しました。この政令201号に反対して、職場放棄をした国労の組合員が、政令201号違反によって起訴されました。
(判旨)
公務員は全体の奉仕者であるのだから、争議禁止も違憲ではない。

  • 全逓東京中郵事件判決(最大判昭和41・10・26)
    昭和33年の春闘の際に、東京中央郵便局の従業員らに、勤務時間内職場大会への参加を呼びかけた被告人が、郵便物不取扱いの罪で起訴されました。
    (判旨)
    ①公務員の労働基本権制限は必要最小限でなければならない。
    ②特に刑事制裁については、政治スト、暴力を伴うスト、不当に長期にわたるストに限定される。

東京都教組事件(最大判昭和44・4・2)

昭和33年、東京都教組は、一斉に有給休暇をとり、集会に参加する方式をとります。これが同盟罷業にあたるとされ、これを指導した被告人が、地方公務員法61条4号、違法な争議行為をあおった罪に問われました。
(判旨)
地方公務員法の言う違法な争議行為というのは、争議行為の中でも違法性の強いものを指す。
②これをあおる行為も、一律に処罰することは許されず、争議行為に通常随伴して行われる程度の行為は、処罰の対象とされない。(二重のしぼり論)

全農林警職法事件(最大判昭和48・4・25)

昭和33年、警職法改正に反対する被告人たちは、全農林組合員に対して、勤務時間内の抗議運動をそそのかしたとして、国家公務員法110条1項17号違反の罪に問われました。
(判旨)
①公務員の地位の特殊性と職務の公共性を考えると、必要やむをえない限度の制限は合理的。
②公務員の勤務条件は、法律・予算で決定されるので、政府に対する争議行為には意味がない。また、公務員の争議行為には市場の抑制力も働かない。
③公務員には、動労基本権の制限の代償として、人事院勧告など関連措置がある。
④二重のしぼり論は法律の恣意的解釈であり、公務員の争議行為の禁止、あおり行為の処罰は全面的に合憲である。



人身の自由

第三者所有物没収事件(最大判昭和37・11・28)

韓国に向けて密輸出を企て、沖合いで逮捕され、船舶と貨物を没収された被告人が、この貨物の中に被告人以外の所有物も含まれていたことを主張。貨物の所有者に告知・聴聞の機会を与えなかったのは憲法29条1項違反と主張しました。
(判旨)
何ら告知・弁解・防御の機会を与えず、第三者の所有権を奪うのは、適正な法律の手続きによらないで財産権を侵害する制裁を加えることになる。これは著しく不合理であって、憲法29条1項、31条に反する。

福岡県青少年保護育成条例事件(最大判昭和60・10・23)

福岡県青少年保護育成条例は、青少年に対する「淫行またはわいせつの行為」を禁じ、違反者に対し罰則を定めていました。16歳の少女と性交渉をしたとして、同条例違反により罰金刑を受けた被告人は、この条例は、性交渉を一律に罰するもので、範囲が広過ぎ、また、淫行という言葉の意味もはっきりしないと主張、憲法31条、13条、19条、21条などに違反すると主張しました。
(判旨)
①条例の趣旨は、青少年の健全な育成を阻害するおそれのあるものとして、社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止することである。
②淫行とは、性行為一般ではなく、心身の未成熟に乗じた不当な手段により行うもの、相手を自己の性的欲望を満足させる対象として扱っているとしか認められない性交または類似行為のことをさす。
③こうした限定は、通常の理解力を持つ一般人の理解にも適うものであり、よって、同規定は不当に広過ぎるとも、不明確とも言えない。

川崎民商事件(最大判昭和47・11・22)

税務署職員による質問検査を拒否した者が起訴された事件です。収税官吏が必要と認めれば、質問を行い、帳簿などの検査を行うことができ、これを拒んだ者は処罰されると規定した旧所得税法が、令状主義を定めた憲法35条、黙秘権を保障した38条1項に違反するとして争われました。
(判旨)
①手続が刑事責任追及を目的とするものでないという理由のみで、一切の強制が35条の令状主義の枠外にあるとするのは相当ではない。
②38条1項の黙秘権は、純然たる刑事手続だけでなく、それ以外の手続でも、実質上、刑事責任追及のための資料収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶ。
③本質問検査の目的、強制の程度、公益上の必要性などを総合的に判断すれば、令状によることを一般的要件にしないからといって、憲法35条の法意に反するものとはいえない。
④刑事責任の追及を目的とするものではない以上、38条1項違反ではない。

成田新法事件(最大判平成4・7・1)

成田空港開港直前に、過激派による施設破壊があり、急きょ、成田新法が制定され、過激派が指定の区域内で使用する建物などについて、運輸大臣が使用を禁止でき、また、職員の立ち入り、質問もできることになりました。
この成田新法第3条に基づき、使用禁止処分を受けた所有者が、禁止処分の取り消しと、慰藉料の支払いを求めました。
(判旨)
①31条の法定手続の保障は、直接は刑事手続についてものだが、行政手続だから保障がないとは言えず、事前の告知・弁解・防御の機会を与える必要がある場合もある。
②本件について制限されるのは、過激派の破壊活動であり、達成しようとする公益は、新空港の設置・管理等の安全で、緊急性もある。この場合は、事前に告知・弁解・防御の機会を与える規定がなくても、憲法31条の法意には反しない。




参政権

衆議院議員定数不均衡違憲判決(最大判昭和51・4・14)

昭和47年12月の衆議院議員選挙について、一票の格差が最大1対4.99になっていることが投票価値の平等に反するとして、千葉県第1区の選挙人らが、選挙無効の訴えを提起しました。
(判旨)
①投票価値の不平等が、国会において通常考慮しうる諸般の要素をしんしゃくしても、なお一般に合理性を有するとは到底考えられない程度に達し、合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのに行なわれない場合は、違憲になる。
③そして、1対5の格差は、正当化する理由が見出せず、8年にわたって定数不均衡の是正がなされなかったことは、憲法上要求される合理的期間内における是正がなされなかったこととし、全体として違憲の瑕疵(かし)を帯びる。
③ただし、本件選挙を無効とするとあきらかに憲法の所期しない結果を生じる。そこで、事情判決の法理に従い、違法を宣言するのみにとどめ、無効としないのが相当である。




国務請求権

強制調停違憲訴訟(最大決昭和35・7・6)

家屋の明け渡しをめぐる争いの中で、「調停に代わる裁判」が行われました。憲法82条の定める公開・対審・判決の手続がとられなかったことが、違憲として争われました。
(判旨)
①純然たる訴訟事件の裁判については公開原則の下、対審および判決によるべきである。
②本件は、家屋明け渡しに関する純然たる訴訟事件であり、これを非公開である「調停に代わる裁判」によることは、憲法82条、32条にも反する。

家事審判合憲裁判(最大決昭和40・6・30)

妻が夫相手に、夫婦同居の審判を家庭裁判所に申し立てました。家裁はこれを認めて、夫に同居を命じる審判をしました。これを不服とする夫は、家事審判法が、家裁の審判によって民事上の義務を負担させるのは、裁判を受ける権利を侵害し、憲法32条・82条に違反するとして争いました。
(判旨)
①法律上の実体的権利義務関係自体について争いがあり、これを確定するためには、公開法廷による対審及び判決の形式によるべきである。
②本件審判は、実体的な権利義務があることを前提として、同居の時期や場所などについて具体的な内容を定める手続であり、違憲ではない。

在宅投票制度廃止違憲国賠訴訟(最大判昭和60・11・21)

在宅投票制度が廃止されたことは、身体障害者等から選挙権行使を奪う違憲の法律改正であり、国会議員には、その法律改正、さらにその後、同制度を復活させなかったことに、故意または重大な過失があったとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求が起こされました。
(判旨)
①法律が違憲であることと、国会議員の行為が国家賠償法上違法であることは別のことである。
②国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定しがたいような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価をうけないものといわなければならない。

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