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行政書士試験平成19年第7問の手続的デュープロセス論

行政書士試験平成19年第7問の手続的デュープロセス論

行政書士試験の平成19年第7問の5つ目の選択肢がよくわかりません。
憲法31条について、「5 この条文は、ニューディール期のアメリカ連邦最高裁判所で猛威を振るった、手続的デュープロセス論を否定したものである。」という選択肢が間違いだというのですが、手続的デュープロセスとかよくわからないのです。また、それがニューディールとどういう関係があるのでしょうか。それが、一体、31条と何の関係があるのでしょうか。


確かに、この選択肢はすこし難しいですね。

手続的デュープロセスという言葉は、日本の憲法学では、あまりなじみのない言葉とは思いますが、アメリカ憲法を学ぶと、修正第5条、同第14条のデュープロセス条項を議論する際には、手続的デュープロセスprocedural due processと実体的デュープロセスsubstantive due processという用語が対比的に使われます。

なお、修正5条、14条の「デュープロセス」という言葉を訳す際には、このようにカタカナをそのまま使うことが多いとは思いますが、「適正な過程」と訳すこともあります。私の知る限りは、「適正な手続」と訳す例はあまりないと思われます。

これだけだと、よくわからないと思うので、以下説明します。

31条の条文を確認しましょう。

第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

これは一般に、手続の法定・手続の適正・さらに実体の法定・実体の適正をあらわしたものと言われています。

ところで、この31条は、アメリカ憲法の修正第5条、修正第14条をモデルにしたものと言われます。

この修正5条・14条は、法のデュープロセスなしに、何人も生命、自由、財産を奪われないと規定するものです。なお、5条は連邦政府、14条は州政府に対する規定となっています。

文言上、すぐに気がつくように、これは財産も規定していますが、それ以上に重要なのは、このデュープロセス条項が、かつては契約の自由を保障するものと考えられた点です。そして、社会経済政策に対して、この条項を元に違憲という主張がなされ、裁判所もそれを認めてきた、つまり、社会経済政策が違憲として無効とされてきた歴史があるのです。

皆さんは、憲法が近代の自由国家的な憲法から、現代の社会国家的な憲法に変化してきたことはご存知と思います。そして、アメリカ憲法は自由国家的な外観を保ち続け、社会権の保障は規定されていません。こうした中でも、大恐慌などを契機に、社会経済政策というものが採用されてきたわけですが、これに対する抵抗の拠点となったのがデュープロセス条項なわけです。

これが大きく争われたのが、ニューディール期です。大恐慌を克服するために、ルーズベルト大統領が打ち出した一連の政策に対して、連邦裁判所は違憲判決によって無効としていきます。これに対する批判は強く、また、ルーズベルト大統領のコートパッキング政策によって追い詰められた最高裁は、やがて、方針を転換し、経済的自由に対する厳格な審査を放棄します。これが、皆さんもよくご存知の二重の基準の歴史的な形成過程です。

そして、日本国憲法の作成に大きな力を持ったGHQの民政局は、ニューディーラーと呼ばれる勢力が強く、デュープロセス条項を規定することに警戒があったようです。

そのために、31条には財産という文言はなく、また、適正手続という言葉も使われていません。

問題の選択肢は、手続的デュープロセス論を否定した、とありますが、これは明らかに、ニューディール期の実体的デュープロセス論を否定したものでなければ意味が通じないわけです。

なお、アメリカにおける実体的デュープロセス論がどのような変遷をたどったかについては、以下の記事も参考にしてください。

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